第12回   ‘占う’か否か?

初めに断っておきますが、今回の内容は、映画が好きな人には多少興味深いかもわかりませんが、そうでない人には面白くもなんともない、それどころか、意味もよくわからない内容に違いありません。

したがって、‘映画が好きな人へ’とすればいいのでしょうが・・・おっとどっこい、そうでない人も、今回の記事を読むと映画に対する興味が生まれるかもわかりません。

少なくとも、今年のアカデミー賞授賞式に対する興味が、ほんの爪の先ほどでも芽生えるかもわかりませんよ。
嘘か誠か、試しに読んでみてください・・・。

L.A.に観光で来る人でも、映画はあまり観ないという人は大勢います。
しかし、観光客全体の中で、映画が好きだという人の占める割合は、アメリカの他の街と比べるとL.A.のそれは多少なりとも大きいでしょう。
そして、アメリカの他の街と比べ、アメリカ映画が好きな人にはなおさら感動が大きいのがこのL.A.といえる、それは間違いありません。
そこで今回は、ゴールデングローブ賞(以下、GB賞)とアカデミー賞の、受賞作と受賞者に関する考察の話です(話の運び方が強引ですけど)。

アカデミー賞といえば世界的に有名ですが、GB賞は知らない人も多いかと思います。
この賞は、ハリウッド外国人映画記者協会(Hollywood Foreign Press Association、略してHFPA)に所属する会員の投票によって決まる、映画とテレビ番組(ドラマ及びコメディ)に与えられるものです。
即ち、会員はロサンゼルスに住む外国人の記者ですね。
今年のGB賞授賞式時点で、実際に活動している会員は87人です。ゴールドグラブ賞とは、似て非なり。
あちらはメジャーリーグにおいて、守備が優れている選手に贈られる賞です。
イチロー選手が2001年のメジャーリーグデビューから去年まで、五年連続でアメリカンリーグの外野手部門で選ばれている、あれです。
また、日本のゴールデングラブ賞(かつてのダイヤモンドグラブ賞)は、メジャーリーグのゴールドグラブ賞を参考に設けられた賞で、やはりこちらもゴールデングローブ賞とは全く関係ありません(余計にややこしくなりました?)。

一方、アカデミー賞は、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Science、略してAMPAS)の会員たち約6000人の投票によって決められます。
こちらは映画産業に従事している人たちによって組織されていて、その中には俳優や監督なんかも含まれています。
GBとアカデミーの両賞では、投票者の数もメンバーの顔ぶれも全く違うということを踏まえた上で・・・。

現地時間1月16日、第63回ゴールデングローブ賞授賞式が、いつもの会場、ビバリーヒルトンホテルで行われました。
例年日曜日に開かれるこの授賞式ですが、一月の第三月曜日はマーチン・ルーサー・キング・Jr.牧師の誕生日という祝日で、今年はこの日が選ばれました。

なぜでしょう?

日曜日といえば、アメリカでは、全レギュラー番組中第二位という高視聴率を誇る、“デスパレートな妻たち”がABCネットワークから大好評放映中なので、授賞式を放送するNBCネットワークはそのあおりを避けたのでは、という見方があるようです。

ところが、‘前門の虎、後門の狼’とは言ったもので、月曜日にはFOXネットワークが自信を持って送り出した、“24”のシーズン5開始イベント、二夜連続放映の二夜目の放映があったんですよ(第2回参照)。
視聴率的には同時間帯放送の番組の中でトップを記録した授賞式中継ですが、昨年よりも約11%アップした視聴率は、“24”とぶつからなければ20%アップしていたかも・・・というのが個人的な推測です。

さて、‘GB賞はアカデミー賞を占う前哨戦’とよく言われますが、果たして本当にそうなんでしょうか?
(文章中の映画のタイトル名に続く年度は製作年です)

GB賞の場合、作品賞、主演男優賞、そして主演女優賞に関しては、ドラマ部門とミュージカル・コメディ部門の二部門があります。即ち、作品賞が二作品あり、主演の男女優賞はそれぞれ二人ずついるということです。
“シカゴ”(02年)や“恋におちたシェイクスピア”(98年)、更には“ドライビング・ミス・デイジー”(89年)などの例外はありますが、アカデミー賞の性格上、GB賞のミュージカル・コメディ部門受賞作品がアカデミー賞を獲るのは極めて難しいと言えるでしょう。
しかしながら、‘GBはアカデミーを占うか?’ということを細かく探るため、ここはひとつミュージカル・コメディ部門も合わせて考えてみます。
そうすることによって、今年のアカデミー賞の受賞作品と受賞者が見えてくるに違いありません!

きっと・・・恐らく・・・多分・・・もしかしたら・・・でも・・・どうでしょう・・・。

以下、90年以降、昨年までの十六年間について、各授賞式における受賞作品の関わり、受賞者の関わりについて見てみましょう。

GB賞のドラマ部門で作品賞を獲ったにもかかわらず、アカデミー賞を獲れなかった作品は、昨年の“アビエイター”(04年)を含め、“めぐりあう時間たち”(02年)、“プライベート・ライアン”(98年)、“いつか晴れた日に”(95年)、“セント・オブ・ウーマン/夢の香り”(92年)、“バグジー”(91年)、そして、“7月4日に生まれて”(89年)と、全部で七作品もあります。
先ほど‘例外’として挙げた、ミュージカル・コメディ部門からの受賞作三作品を考慮に入れると、‘ドラマとミュージカル・コメディの両部門の受賞作品が、ともにアカデミー賞を獲れなかった年’は、十六年間で四年ということになります。
その四つの年のアカデミー賞とGB賞の受賞作品は以下の通りです。
(年度は授賞式の開催年)

  アカデミー賞受賞作品 GB賞受賞作品 ドラマ部門
ミュージカル・コメディ部門
05年 ミリオンダラー・ベイビー アビエイター
サイドウェイ
96年 ブレイブハート いつか晴れた日に
ベイブ
93年 許されざる者 セント・オブ・ウーマン/夢の香り
ザ・プレイヤー
92年 羊たちの沈黙 バグジー
美女と野獣

次に、主演男優賞はどうでしょう?
GB賞でドラマ部門の主演男優賞を獲りながらアカデミー賞を逃した男優は、‘刑事(デカ)プリオ’というCMも懐かしい、昨年のレオナルド・ディカプリオ(アビエイター)以下、ジャック・ニコルソン(アバウト・シュミット)、ラッセル・クロウ(ビューティフル・マインド)、トム・ハンクス(キャスト・アウェイ)、デンゼル・ワシントン(ハリケーン)、ジム・キャリー(トゥルーマン・ショー)、ピーター・フォンダ(ユリーズ・ゴールド)、ニック・ノルティ(サウス・キャロライナ)、そしてトム・クルーズ(7月4日に生まれて)と、日本でも馴染みの男優ばかり、なんと九人もいます。

昨年のジェイミー・フォックス(RAY/レイ)と、P・フォンダに勝ったジャック・ニコルソン(恋愛小説家)はGB賞ミュージカル・コメディ部門受賞からのアカデミー賞受賞者ですから、‘ドラマ及びミュージカル・コメディ部門のどちらかの受賞者が、ともにアカデミー賞を獲れなかった年’は七年ということですね。
特に、99年から03年までは五年連続でGB賞の主演男優賞獲得者はアカデミー賞を獲れていません。
それはあたかも、アカデミー協会の会員たちが敢えてGB賞受賞者を避けて投票したようにも見えます。

更に特筆すべきは、99年、“トゥルーマン・ショー”のJ・キャリーは、アカデミー賞ではノミネートさえもされていないということです。
GB賞のドラマ部門での受賞者では、これは過去十六年間では彼だけです(GB賞の主演男優賞・女優賞がドラマ部門とミュージカル・コメディ部門に分けられたのは51年からですが、過去五十五年間では彼は四人目)。
おまけに書いておくと、彼は翌年、“マン・オン・ザ・ムーン”によってミュージカル・コメディ部門での主演男優賞を獲ったんですが、やはりアカデミー賞にはノミネートさえされなかったんです。
ミュージカル・コメディ部門ではこれは珍しくないんですが、J・キャリーの場合は前年のこともあり・・・

アカデミー協会員の好みが如実に現れているように見えますよ、このヨーダの目にはッ!

気を取り直して、主演女優賞を見てみましょう。
シシー・スペイセク(イン・ザ・ベッドルーム)、ケイト・ブランシェット(エリザベス)、ジュディ・デンチ(ミセス・ブラウン)、ブレンダ・ブレシン(秘密と嘘)、シャロン・ストーン(カジノ)、そしてミシェル・ファイファー(ファビュラス・ベーカー・ボーイズ)と、ドラマ部門受賞者の中では六人の女優がアカデミー賞を逃しています。
ドラマ部門受賞者を抑えてアカデミー賞のオスカー像を手にしたミュージカル・コメディ部門受賞者は、K・ブランシェットに勝ったグウィネス・パルトロー(恋におちたシェイクスピア)、J・デンチを破ったヘレン・ハント(恋愛小説家)、M・ファイファーをベテランの味で寄り切ったジェシカ・タンディ(ドライビング・ミス・デイジー)の三人です。
即ち、‘ドラマとミュージカル・コメディの両部門受賞者の両者ともがアカデミー賞を獲れなかった年’は三年(この三年についても、GB賞受賞者がなぜ選ばれなかったのか、想像がつくところはありますが、それについては言及を控えておきます)。
この結果だけを見れば、アカデミー賞の主演女優賞は、GB賞受賞者から出る確率が高いと言えますね。
そこで思い出されるのが、第74回のアカデミー賞授賞式(02年)です。
GB賞を獲っていなかったハル・ベリー(チョコレート)が見事に主演女優賞を獲得しましたが、恐らく本人でさえ予想だにしていなかった受賞は驚愕に値し、その驚きも、見ている者をも感動させたあのスピーチでの涙の理由(わけ)になったんでしょうね。

GB賞を獲りながらアカデミー賞を獲れなかった監督は十六年間で五人います。
確率上、アカデミー賞の監督賞は主演男優賞以上にGB賞受賞者から出る可能性が高いと言えますが・・・。
実は、その五人の中に、今回のGB賞を“ブロークバック・マウンテン”で獲ったアン・リーが含まれているんです。
彼は01年、“グリーン・デスティニー”でGB賞を手にしましたが、アカデミー賞は“トラフィック”のスティーブン・ソダーバーグにさらわれてしまいました。
今回、彼は五年前の雪辱を晴らすことができるでしょうか?

助演男優賞と助演女優賞についても言及したいところではありますが、これ以上記事が長くなると、空腹でお腹と背中がくっついてしまいそうなので、それは割愛しておきます。
ひと言だけ書いておくと、アカデミー賞での助演賞部門は意外な人が獲得するということが少なくなく、GB賞はアテにならないことが多いです。
この十六年間でのGB賞獲得者の内、男優では七人、女優では、なんと半数の八人がアカデミー賞を逃しています。

あ、ふた言書いてしまいましたね。

以上の内容を根拠に、みなさんはどう考えますか?
GBはアカデミーを占う?それとも、そうは言えない?

では、お答えしましょう。
これは、一言では言えないということですね(誰ですかッ!?ズッコケた人はッ!)。
結果だけを見てみると、‘強い候補’があれば、確実に‘占う’と言えるでしょう。

04年
作品賞  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
監督賞  ピーター・ジャクソン(ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還)
主演男優賞  ショーン・ペン(ミスティック・リバー)
主演女優賞  シャーリーズ・セロン(モンスター)
助演男優賞  ティム・ロビンス(ミスティック・リバー)
助演女優賞  レニー・ゼルウィガー(コールドマウンテン)

95年
作品賞  フォレスト・ガンプ/一期一会
監督賞  ロバート・ゼメキス(フォレスト・ガンプ/一期一会)
主演男優賞  トム・ハンクス(フォレスト・ガンプ/一期一会)
主演女優賞  ジェシカ・ラング(ブルースカイ)
助演男優賞  マーチン・ランドー(エド・ウッド)
助演女優賞  ダイアン・ウィースト(ブロードウェイと銃弾)

この二つの年は、アカデミー賞の上記六部門の受賞作、受賞者は全てGB賞も受賞しています。
こうして見ると、04年“ラスト・サムライ”の渡辺謙さんは、強かったティム・ロビンスに負けるべくして負けたと言えますね。逆に97年は、GBとアカデミーの両受賞式受賞は、作品“イングリッシュ・ペイシェント”と主演男優ジェフリー・ラッシュ(シャイン)の二部門のみです。この年は、‘占っていなかった’のです。または、‘占いが外れた'とも書けるでしょう。

さて、私も、そして多くの映画ファンも興味深く注目しているアカデミー賞授賞式ですが、今年のGB賞授賞式はアカデミー賞を占っているのかどうか ?
以下が今年のGB賞の主要部門の結果です。

作品賞(ドラマ部門)  ブロークバックマウンテン
作品賞(ミュージカル・コメディ部門)  ウォーク・ザ・ライン 君につづく道
監督賞  アン・リー(ブロークバック・マウンテン)
主演男優賞(ドラマ部門)  フィリップ・シーモア・ホフマン(カポーティ)
主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)  ホアキン・フェニックス(ウォーク・ザ・ライン 君につづく道)
主演女優賞(ドラマ部門)  フェリシティ・ハフマン(Transamerica)
  [この人、“デスパレートな妻たち”のリネット役ですね]
主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)  リース・ウィザースプーン(ウォーク・ザ・ライン 君につづく道)
助演男優賞  ジョージ・クルーニー(シリアナ)
助演女優賞  レイチェル・ワイズ(コンスタント・ガーデナー)
脚本賞  ブロークバック・マウンテン

今年のアカデミー賞授賞式のノミネート発表は1月31日、アメリカ太平洋時間の午前5時30分(日本時間、同日午後10時30分)にビバリーヒルズで行われます。

そして、第78回アカデミー賞授賞式は3月5日の日曜日、ハリウッドのコダックシアターにて現地時間午後5時(同、6日午前10時)に開催です。



というわけで、‘半分くらいは当たるヨーダのアカデミー賞レース予想’は、ノミネート発表後、来月のこのコーナーで、アカデミー賞の話題とともに語らせてもらいますね。
今回の記事を読んで、ほんの爪の先ほどでも興味が芽生えた人は、またご覧ください。

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よだ ゆきお

大阪生まれ。“スター・ウォーズ 帝国の逆襲”が公開され、初めてそこにヨーダが登場した時には周りの悪友達に、「ヨーダ、ヨーダ」とおちょくられて、いい気分はしなかったが、今はアメリカ人から、“Yoda, Yoda”と、名前を覚えてもらいやすいが為にいい気分をしている根っからの映画大好き男。